脚光を浴びて登場したGTRも理論はすばらしいが、いざ実戦となると適応症が制限されるきらいがある。インプラントも華やかであるが、これとて治癒機転は接合上皮が下方へ延びてきて、本来の歯根膜附着とはかなり違った像を呈している。この点、自、他家いずれの歯牙移植も本来の歯根膜機能を保持し、欠損顎提に天然歯同様の組織構造を得ることができる。また歯槽骨の添加も期待できるので顎提の廃用萎縮の防止にも役立っている。
一方、現在歯周外科療法としてSRP、PCur、FOPなどが行われている。しかし、その対象が複雑でその上狭い口腔内での操作は煩雑であり、全てが明視野では行われ難い。ペリオの専門医でも軟組織に歯垢を押し込んでしまったり、歯石を取り残してしまう事もあるといわれ、パーフェクトとは云い難い。
近年、歯周組織を再生する能力をもつ細胞の存在が次々に証明され、それらを活性化させる事で、歯の支持組織を修復させる治療法に目が向けられてきている。
細胞を刺激し、組織を再生させる可能性を有する因子としていくつか挙げられてきているが、その一つにエナメルマトリックスデリバティブ(EMD)がある。これは歯周疾患の中等度以上の外科手術に応用されつつあり、歯根面に塗布することによリダウングロスも発生しないといわれる。最近、歯牙の再殖、移植が比較的容易に行われるようになってきた事から今後の歯周外科療法はかなり違うものになるのではないかと思う。
すなわち歯周疾患の中等度や重度の外科療法を必要とするものは、狭い口腔内での煩雑で不確実な操作を避け、むしろ一度歯牙を抜去し、口腔外に取り出し、明視野でSRP、CMDなどを併用して埋めもどすといった方法がより多く取り入れられる事になるのではないだろうか。
一昨年、臓器移植法が施行され、折りしも国内で初めての脳死患者から臓器移植が行われている。東洋的倫理観からするとどうかという問題はさておいて、医科においては臓器移植がさかんに行われてくる時代がきている。
歯科においてもこれからは自家移植は言うに及ばず他家移植、異種移植も応用されてくる事であろう。歯医者はヒト(患者)の歯でメシを喰っていると椰楡されてきたが、患者本人も他人様の歯でメシを喰う時代が来ると思う。
東京歯科大学同級会報
平成11年(1999)3月